減価償却費って何なんですか?と聞かれることがあります。簡単に言えば、ボールペンなどを購入した時の費用とほぼ同じ言葉(科目)です。ただボールペンと違い、パソコンなど価格が高価なモノについては、一度に費用にするのではなく1年単位で少しずつ費用処理しましょうとボールペンなどと区別し、この区別で生まれた費用の名称が減価償却費です。
ツールの解説|減価償却費とは?
会計の世界では、「資産は時間が経つにつれてその価値が減っていく」という考え方があります。通常決算は1年単位で行われますので、この1年を境に処理を分けています。
ボールペンなど安価な資産は、1年でその価値がなくなるとし、パソコンなど高価な資産は1年では価値がなくならないとしました。1年で価値がなくなるなら、その価値はすべて費用になるため、損益計算書の費用となります。
一方、パソコンなど高価な資産は1年で価値がなくならないと考え、購入した価格をすべて1年で費用にするのではなく数年かけて費用を分担することとしました。この数年かけて費用にするとき、1年単位の費用のことを減価償却費といいます。
ここで、ボールペンという資産を購入した全額の支払いはどうなっているでしょうか。損益計算書上にはでてきていません。そんなことはないだろう、費用として計上されているだろと言われると思います。考え方ですが、ボールペンの資産が1年でその価値がなくなるその額が費用と考えると、資産=費用なので区別がつかないだけで実際は費用です。
これをパソコンについて当てはめてみます。パソコンを購入したときのパソコンという資産の支払いは、損益計算書には記載されていません。パソコンの資産のうち1年間分の価値が費用なので、資産ー費用=残りの資産となります。この費用のことを減価償却費といいます。
ボールペンの場合は、会計年度1年間の中で購入し支払った費用として全額計上されるのでわかりやすいです。一方パソコンの場合は、会計年度1年間の中で購入し支払った額の全部ではなく一部が費用として計上されます。つまり、違いは会計年度1年間でいくらまで価値を費用として計上するかの違いです。全部か1部かの違いです。
実践的な内容|信用保証協会の保証の条件
ボールペンなどの安価な資産は、資産の額=費用なので、購入費がそのまま費用となります。減価償却費の場合、数年かけて費用を計上するため、購入時より数年かけて費用として計上することになります。ボールペンもパソコンも購入時に全額支払いますので(分割支払等は考えない)、費用として一部計上する場合には、全部計上する実際の現金の減少はありません。つまり、費用として一部計上する減価償却費は、利益から減算しますが現実には現金の減少はありません。
それゆえ、大雑把に言えば、損益計算書の経常利益等の利益に減価償却費を足し算したものが、現金としての利益になります。以下の例でもあるように、中小企業の場合、経常利益に減価償却費を足し算した値で評価される場合があります。会計上の利益ではなく現金に近い利益で評価することになります。実際に手元にどの程度現金があるかで評価された方が現実的です。
信用保証協会の保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度には以下の記載があります。
「直近決算期において債務超過でないこと」かつ「直近2期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと」。
引用:中小企業庁:保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します
ここに減価償却費前経常利益とあります。経常利益は既に減価償却費を控除しているので、経常利益に減価償却費を足してくださいという意味です。経常利益で赤字でも減価償却費を足し算して黒字になる場合を想定しています。減価償却費は費用ですが実際の現金ではないので、控除することで経常利益が赤字になっても、現金としての利益は黒字になる場合を想定しています。
まとめ
- 資産は目減りする :資産は時間が経つにつれてその価値が減っていくと考える。
- 費用は全額計上 :資産を1年間使った分だけ費用として処理する。
- 減価償却費は一部計上:資産を1年間使った分の費用を減価償却費として処理する。